競走馬のストレス
競走馬は、いつも何かしらに疲れています。
周りの人間との関係や、競争するためのトレーニング、発情してもどうすることもできないもどかしさ。
これらすべてが競走馬にストレスをかけるのです。
ストレスを受けた競走馬は、様々な行動を示します。
頭を左右に振ったり、ところかまわず噛み付いたり、自分の足を傷つけたりと。
さて、ここでストレスについて皆さんはどのように思っていますか。
ストレスには大きく分けて2種類あります。
精神的なストレスと肉体的なストレスです。
精神的なストレスは、特に筋肉を使ったわけでもないのに、だるくなったり、頭や内臓が痛くなったりするものです。
それに対して肉体的なストレスとは、筋肉を使った結果、筋肉、骨格、関節にダメージが蓄積することを言います(正確ではないけれどそう思ってください)。
この2者は密接に関連していますが、でもまったくの別物と思ってもいいです。
この2者のうち肉体的なストレスはよく予想家が言及しますが、精神的なストレスについては評論家はほとんど言及しません。
ところが、実は競走馬には精神的なストレスのほうがずっと重要なのです。
というのも、競走馬は自分の筋肉の能力のうち3割も使ってないからです。というか、自分の能力のほとんどを使用していないとさえいえるのです。
たとえばパドックで馬の足元を見てみましょう。ほとんどの馬(特に下級戦になればなるほど)は、足に怪我を持っているのがわかります。足にまったく怪我をしていない競走馬とは矛盾した存在なのです。健康でぴんぴんとしている馬とはつまりトレーニングを積んでいない遅い馬だということです。
肉体的なストレスは常にある程度かかっているが、そのストレスがひどくならないようにスタッフは細心の注意を払っているので、われわれ素人はあまり考える必要はないのです。
いわゆる、「競走馬は常にしっかりと走れる状態でなければいけない」という、JRAの唱えるお題目は、かなり正しいのです。ただし、地方競馬では、馬の足がガタガタのボロボロでも使えるうちは使うという傾向があります。
さて、精神的なストレスについてですが、一言で言えば、走る気がある時でなければ走らない、という大原則があります。
あんなに強かったはずの馬が、なぜ今は惨敗し続けるのだろう、ということがしばしばあるのがその現われです。
たとえどんなに優秀な予想法があろうとも、この精神的なストレスを考えない方法は息詰まることでしょう。
非常にショックなことですが、ナリタブライアン、シンボリルドルフ、マルゼンスキー、トウショウボーイ、トウカイテイオー、サクラローレルと、ナイスネイチャが一緒に走ったとしましょう。その際、ナイスネイチャだけが走る気があるという条件下では、ナイスネイチャが勝ってしまうのです。
・精神的なストレス
よく行われる比較の一つに、オグリキャップのラストランの有馬記念は、同じ日同じ距離の900万下レースよりタイムが遅かった、というのがあります。でもここから、「だから900万下レースのほうが有馬記念よりも高レベルだった」、と思う人はまずいません。この話は競馬はタイムレースではないということをあらわしていますが、同様に精神的ストレスの存在についてもあらわしています。
タイムレースについての話はそのうちにします。
走る気があるかないかを判別するにはパドックが有効であろうと考えています。といっても、パドックでは肉体的ストレスの判別がメインですが。
もしかしたら走る気の有無を決定する要素に、占星術的な物やその他占いなどがあるかもしれませんが、寡聞にして私は知りません。
それよりももっと実験心理学的に説明できることがあると私は思っています。
それについてのいい参考書があります。
メタモル出版のMシリーズです。著者は今井マサヒロ。
これを読むと精神的ストレスを実験心理学的に把握することが少しできるようになるかもしれません。本の内容には眉唾な部分もありますが、結構面白いです。
JRAの競走馬研究所でも、精神的なストレスについてかなりしっかりと研究されているようですし、そのうちこの考え方が全国的に広まることでしょう。
まず、競走馬の縦の比較をする習慣をつけると、精神的なストレスについて少しわかるかもしれません。縦の比較とは、競馬四季報や週間競馬ブックなどの全成績欄を見て、好走するときは、どんな点が前走(前前走)と違うのか、を考えることを言います。
すると、好走のパターンというのが見えてくるようになると思います。
競走馬は自分の実力のわずかな部分しか発揮することはできません。
どんなに強い馬でも、走る気が無いときは惨敗します。
それゆえ、無敗の馬は非常に貴いのです。


