☆USCF 米国チェス連盟トーナメント参加の手引き


アメリカへ旅行して観光とチェスの大会を楽しもうというチェスフリークの方の
ために簡単な手引きを書いてみます。


1.チェスフリーク

あなたが国内でチェスを愛好し OTB(オーバーザボード=実戦)を
各種チェス集会・クラブで楽しんでいるかたとします。

それも国を代表されるようなトッププレイヤーでなくのありふれたクラブ常連の腕前の
方としますね。

チェスも国内で指し、地方のチェスクラブも小旅行で廻った。
そのとき、チェス仲間から聞いたけれども、アメリカに行けば大きな大会があって
参加するプレイヤーも多人数だそうだ。
200ポイント刻みでクラス分けされた階級のトーナメントに出場することができ、
自分の棋力に見合った同じレベルのプレイヤーと楽しくゲームできるようだと聞いた
とします。

調べてみると、賞金トーナメントでラッキーなら上位に食い込めるかもしれないし、
もし大会の成績が振るわなくても観光も楽しめそうだし、とりわけ外国旅行に行く
目的ができるので退職後とか、チェスの友人達といつかは参加したいなと考えたと
します。


2.会員になる・更新する

USCF のチェスの試合に出るには USCF の会員にならなければなりません。

The United States Chess Federation の Home Page の Join/Renew
から会員になりましょう。
英語ですが仕方がありません。ご自分でされるか、英語の堪能な友人で
対応してもらいましょう。外国人は少し割高です。

会員には月刊のチェスライフ(印刷物)を毎月購読するタイプと、最近はオンラインに
移行しつつありますから、ウェブ会員(チェスライフ郵送なし)のタイプがありますが
どちらかを選びましょう。

以前のメンバーだって会費切れの状態でも会費を払えばメンバーに復帰できます。
以前のレイティングも復活できます。
なお、会費切れの期間の会費は払わなくて結構です。


3.トーナメントへの参加申込

ウェブもしくは月刊のチェスライフにトーナメント情報が各州ごとに載っています。
また大きな大会は広告があります。インターネット上でも申し込みことができます。
一般に日本人の方はインターネット上でエントリーします。
 at site と言って現地で受け付けで申込事もできます。メンバーズカードが必要です。


4.トーナメントの運営形態

USCF のトーナメントは主催するのが、クラブ単体、州連盟、ナショナルイベントと
いろいろあります。

USCF の公式競技会で大きなトーナメント大会を「CONTINENTAL CHESS ASSOCIATION」
という団体が開催しているものがあります。この団体は1960年代から USCF の大きな
チェス大会を運営する専門の組織で、スタッフ、審判、受付け、スポンサー確保、賞金
分配を行っています。何回か大会を廻ると見覚えのあるおじさんの審判とか、のっぽの
おばさんとか同じスタッフでツアーしてるのがわかるでしょう。

CONTINENTAL CHESS ASSOCIATION の運営する主な大きな大会は

    *  Chicago Open
    * Foxwoods Open
    * National Chess Congress
    * North American Open
    * World Open

 です。

だいたい200点ずつぐらいでエントリークラスがあり自分の棋力に見合ったクラスに
でます。200点をどこで線引くのか、たとえば U2100 とか U2000 とかはその大会に
よってまちまちです。

これらの上記のメジャーな大会は日本人がしばしば参加します。
せっかく行かれるのだから6-9Rの長めの大会がおすすめです。


5.レイティングのこと

参加するにあたり僕たち日本人はForeign player となり、Foreign player rating rule
に従います。大会のインフォメーションページをよく読みましょう。アンレート、
仮レートの扱いは微妙です。これは外国人が低いレイティングでエントリーして高額賞金
を持ち出すのを防いでいます。
at siteでエントリーすると受付で「日本人か?fide レイト持ってるか?日本のレイト
はいくつ?」とか聞かれて受付で参加するクラスを向こうが指示します。
日本人で USCF の本レイトをもつプレイヤーはオンラインでエントリーすることが多い
です。

仮レートでもエントリーできると思いますが、受付スタッフがクラスの変更を打診
したり、あらかじめ賞金獲得の上限を交渉もしくは指示されたりすることがあります。
こういった英語でのやりとりと回避するために、、多くの日本人はウェブエントリー
します。

トーナメントによってそれぞれ条件は違いますのでインフォメーションをよく読みま
しょう。一般的に早期エントリーは参加費の割引があります。

さて、26ゲームをこなすと本レイトがつきますが、これはかなり大変です。4大会ぐら
い参加しないとこなせませんので、本来なら数度の渡米が必要です。そこで僕達は日本
で USCF クラブをつくり、公式戦を開催しました、本来の目的はそういったことでした。
特殊な用途になりますが、米国の賞金トーナメントに行きたい、もしくはその準備を
される方は僕たちのクラブ主催のトーナメントに参加してください。


6.渡航の手続き・準備

日本人が向こうのトーナメントに行く時は個人単独より小グループで参加することが
多いように思います。渡米ルートとか別々ですが、チェスの仲間が参加するのが決まっ
ている場合、あちらで待ち合わせたり、食事をいっしょにしたりします。
また全く一人で行動されるタフなプレイヤーの方もいますが、現地で打ち合わせなしに
偶然会えば日本人同士でなにかほっとするような気分で過ごせます。

渡航について飛行機の手配はたぶん個人でできるでしょうし、チェスのトーナメントの
オンラインエントリーもたぶんできると思います。

ややこしいのは、宿泊 部屋の手配で、大きなチェストーナメントには開催場のホテルに
チェス参加者用に格安のホテル宿泊プランというのが用意されています。これは大変
お得です。一般的に予約すれば一泊数百ドルの通常部屋ですがそれが100ドル以下で
提供されると思います。それも一人の値段ではなく一部屋単位の価格です。

Hotel rates: $96-96, 800-833-****, -------

こう書かれているのは、チェス参加者専用のプランは 1部屋単位(4人までOK) 1泊96ドルだよ。
一人が好きな人は一人1部屋で使用し、同室でも構わないひとは2-3人で泊まることが
多いです。

800-833-**** にホテルへ電話で予約してください、ということです。

また、何月何日以降は部屋がないかも知れないから、その場合は近くの A ホテルへ....
とかも書いてあります。


これはオンラインで出来ることは全くまれで普通電話受付しかありません。
運悪くたまたま、ホテルの受付がチェスレートの話を聞いていなく、そんなプランは
知らない、とか言われることもあります、また違う担当に電話を廻されたりしますが、
トーナメントのホテル情報の件を述べて交渉してください。


最小限の英会話は必要です。
僕も英会話がひどく苦手ですが、格安の行政主催、ボランティア団体主催の英会話講座
に行っています。また有能なチェス友人にその交渉をお願いする、または試してはいま
せんが郵便で予約というのもありかと思います。


現地でホテルにチェックインの手続きをしたいのだけども、手ちがいで予約がされて
おらず満室だという事もありえます。邦人の顔見知りがいたりすると同室させて頂いた
りする場合もありました。


7.試合会場で

オンラインですでにエントリーされた方は受付不要です。
通常開会の挨拶も式典もなく始まり、各クラスごとにペアリングが張り出されますので
それを見て指定の部屋、指定のボードナンバーの張ってあるテーブルへゆきましょう。
基本的に盤、駒、時計はプレイヤーが用意します。先に行ってビニールシートの盤、
プラスティクの駒を並べ時計をセットして相手を待ちます。定刻になると黄色のユニ
フォームを着た審判が時計を押して試合を始めろ相手がいなくても始めろと言います
のでゲームをはじめます。どちらのプレイヤーも駒、盤、時計を持っていない場合、
友人に借りるか、チェス売店で買います。定刻からそのため遅く始まった場合は審判が
双方の時計から時間をその分減したり指示します。

チェスクロックでアナログとデジタルがある場合、デジタルを優先します。


8.ゲームの時間設定 チェスクロックの設定(Bronstein Delay)

トーナメントのインフォメーションで 7SS, 40/2, SD/1 と書いてある場合。
7ラウンドのスイスシステム ゲームの持ち時間は40手2時間 以降+1時間指し切り
サドンデス という意味です。この場合 1 試合にかかる時間は最大 6 時間になります。
USCF の大衆オープントーナメントに於いてフィシャーの30秒追加/move とかのシステム
を使用しません。G/75 と書いてあれば game 75分指し切りという意味です。
これは多人数参加トーナメントでフィシャーを使うとゲームのスケジュールに支障をき
たす場合があるので1手ごとの時間加算を行いません。
ただこれだとどうしても指し切りになり、勝ちの局面でも時間切迫による負けとかが
発生するでしょう。時間切迫による競技者から審判へのドロー裁定の申請も発生する
でしょう。その裁定に時間がかかりましょうし余りに多いと円滑なトーナメント運営が
できません。

それでそれを補うチェスクロックの設定方法が「Bronstein Delay」 バーンスタイン 
ディレイ というシステムです。USCF の大きな大会ではこれがもっぱら採用されます。
「このシステムは 1手につき最大5秒を加算する」というものです。

説明の英語本文は以下

Bronstein delay―with the Bronstein timing method, the increment is always added after the move. 
But unlike Fischer, not always the maximum increment is added.
If a player expends more than the specified increment,
then the entire increment is added to the player's clock.
But if a player has moved faster than the time increment, 
only the exact amount of time expended by the player is added. For example,
if the delay is five seconds, the player has ten seconds left in his clock before 
his turn and during his turn he spends three seconds, after he presses the clock 
button to indicate the end of his turn, his clock will increase by only three seconds (not five).

ですから、エンドゲームで勝ちの局面なら、自分の持ち時間がたとえ30秒でも、5秒以
内の着手なら自分の時計が進みませんので無事ゲームを終えることができます。
G/75 というゲームでこの「Bronstein Delay」 をデジタル時計で使用する場合双方
の持ち時間を-5分の70分に設定します。これで60手まで指してG/75分と同じスケジュ
ールで運営します。対局者がどちらも、デジタルを所持していなくアナログ時計の場合
はG/75の場合は75分に合わせます。

試合の開始前に黄色の服の審判が「Bronstein Delayを使用するゲームは5分引いて時計
を設定しろ」と会場でアナウンスします。
また審判は「オープンクラスのゲームは棋譜のコピーを提出しろ、下のクラスの方は棋
譜はいらない、ただこのゲームは上出来のゲームの思う方は提出してくれ、良かったら
何かに掲載されるだろ。あっと言っておくけど下のクラスの不出来のクズの棋譜はいら
ねえ、ひどい棋譜を提出するんじゃねえぜ。」とか言いますが、これは余談です。


9.ゲームで

試合のはじめはまず握手から始まります。もし相手が来なくても時計を押します。
相手が現れない場合もしばしばあります。もし相手が開始から1時間あらわない場合は
会場のを廻る審判に「僕の相手が現れない、1時間を経過している」とクレームをつけ
るとと相手の F0、あなたの F1(ファールのよる勝ち)を証明してくれますのでペアリ
ングの結果報告シートに書き込んでゲームを終わります。

国内戦と同じように自分の手番では席を外せません。

駒の位置を直す時は自分の手番に「I adjust.」 アイ アジャスト と言って了解を
受けて行います。

ドローオファーは通常とうり手をクロスで×をつくるか人指し指で×を作って問題あり
ません。検討をする場合は用意されている別室などでしてください。


10.あまたのトラブル

米国のトーナメント参加でいつくかのトラブルが発生しますが、個人でゆくより現地集
合でも小グループでの参加をお薦めします。食事のトラブル、予約を含めた客室のトラ
ブル、スーツケース・財布パスポートの紛失、薬の不足、寝坊によるラウンドへの不参
加・不参加による次のラウンド復帰するための英語での運営スタッフへの釈明、相手が
どうもコンピューターつかっているみたいだ、それをアピールしたいが、などありと
あらゆることが起こりますのでトラブル処理のスキルアップと共に友人、知人のチェス
フリークとのトーナメント参加をお薦めしてこの手引きを終わります。


P.S.

インターネット上に日本人の方のトーナメントレポートなど最近はいくつもあると思い
ますので参考にされてはと思います。